世紀の大感動!

98年2月17日長野冬季5輪の出来事。
日本の多くの人たちが、当然、金メダルと思っていても心の片隅にヒョットすると
また、何か悪いことがおきるかも...。の一抹の不安を抱えながらその時を、
待っていた。
日本が世界最強のジャンプ陣と言われても、何があるか分からないのがジャンプ
の怖さで有ることは、みんな知っていた。
そう、我々日本人が皆、原田雅彦といつの間にか心が一緒になっていたのだ。
この日会場の白馬の天気は最悪に近い雪が降っていた。
開会も30分遅れの午前10時から始まった。
13カ国、各国4名の2回のジャンプの合計点で競われるK120ジャンプである。
日本の順番は1番手がクールな岡部孝信、2番手は目立たないが確実な斉藤浩哉、
3番手は前回のリレハンメルの失敗ジャンプした陽気な原田雅彦、そして最後が
若きエース舟木和喜の編成である。
観客、TVの視聴者みんなと言っていいほど気持ちは原田と同化していた。
日本のチームは13カ国中の最後に飛ぶ。
1番手の岡部のジャンプは121.5mと第一グループでは2位に付けた。
まずまず、と思った。
2番手斉藤、雪は一向に止む様子がない。その中で130m飛びこの時点で1位!
みんな良し来いと心で叫んだ!
そして、3番手原田の番である。原田の二人ほど前から雪はさらに強く降ってきた。
ジャンプ台の滑走路に雪が積もるとスキーがの滑りが悪くなる。
みんなの不安が...。
天の神はいたずら者である。不安さらに...、みんな大丈夫か...と思う中
降雪は最悪、下の方からは原田の姿が確認出来ないほど降ってきた。
その中で合図の信号が青に!原田は滑走した。そしてジャンプ!
みんな固唾を飲んで見守った.....「原田飛ばない!」。
結果79.5m「失敗ジャンプ」「仕方ないですよねこの雪だから...」
そして4番手の競争最後の舟木は固く118.5m。
TVの司会者始め、みんなの気の持ちは、あのリレハンメルの悪夢をよぎった。
重い空気が日本中を覆い尽くした。
一本目の結果は
1位オーストリア、2位ドイツ、3位ノルウェー、そして日本は4位!
1位との差が13.6....。ヨーロッパ勢はここ一番に強い!
まだ、雪は一向に止みそうにない!
さらに悪いことに、2回目が始まったのだが、
雪がひどくみんな飛べない位の状態になった。何人か飛んだあと、何と競技が中止。
不安が会場に蔓延する。このまま中止になると前半の成績で決定する事になる。
そうなると、日本は金はおろかメダルに手が届かない事になる。
しばらくすると、20分後に2回目の最初から始めるとのアナウンス。
何とか、再開して欲しいと祈る。
20分後競技は始まった。だがまだ雪は降っている。
みんな一回目と大差なくジャンプし、距離も延ばしてくる者もある。
そんな中、1番手の岡部の番がきた。
みんなの注目する中を飛んだ!....長い滑空である。
「飛んだ飛んだ!大ジャンプ!」
その日の最長不到距離の137mの文字どうりの大ジャンプである。
この時点で逆転!日本勢は1位になった。だがまだ3人残っている。
2番手の斉藤、なぜか彼は程々に飛ぶだろうと思われているせいかそんなに不安を感じさせない。
結果は期待どうり124mと手堅く飛んでくれた。まだ1位である。
みんなの気持ちが原田に...。
そして、原田の番である、みんな祈った失敗するなと...。
信号が青に変わり、コーチのゴーの旗が振られた。原田は滑走路に飛び出した。
場内は一瞬、空気が止まったように、滑走する風切り音が...。そして飛んだ!
永遠の時間を覆い尽くすかのように、
そして天使が彼を持ち上げてくれたかのように誰より高く飛んだ。
そしてみんなが「転ぶな!」と叫んだ。
着地した・・「しばらくお待ちください」の場内アナウンス...。
誰より遠くに飛んだ。もうそれはジャンプの領域ではなかった。
ジャンプが大いなる感動として永遠に飛んでいるかのようだ。
場内は割れんばかりの興奮、「やった!やった!」のコメント。
あの陽気な原田が泣いていた。いや国民みんなが原田と一緒に泣いた。
みんな知っていたのだ、辛かった原田の選手生活を、そして一回目の失敗!
その、悪夢のような運命の悪戯、その中での大ジャンプ!
こんなすごい演出は無い。
この時点で2位に大きな差をつけた。舟木は115m以上飛べばいい。
場内は祈りに似た空気が広がって舟木に覆い被さっていた。
舟木のプレシャーはすごいものがあったその中で125m。テレマークも決まった。
そして一位決定!あの舟木も今までに無い喜び。ガッツも最大限に力が入った。
先に飛んでいた3人が舟木に抱きつき、雪の上に転がった。
原田は「泣いた、泣いた」そしてみんなもバンザーイ....。
舟木も「原田さんの気持ち分かりました」と...。
TV局には感動、感激のFAXの洪水。インターネットもアクセス不能!
この日、日本中が感動の嵐が吹き荒れた!
日本中が原田と感動を共にしたのである。まさに金メダル以上のプレゼントであった。
しかも日本にとってはオリンピック通算100個めの金メダルでもあったのだ。
まさに歴史に残る大ドラマで有る。
映画の感動なんかより何百倍も大きな感動である。
そして、この日TVで何度も何度も出演する度に、感動もまたおそってくる。
新聞も、インターネットもこの世紀の感動の嵐が吹き荒れる。

そして、「ありがとう原田!」「良かった!」....。