エリザベス(99
難しい映画である。作品のテーマが難しいのだ。NHKの大河ドラマの様に時間がたっぷりとあれば、
作りやすいだろうにと思われた。
難しい原因は、
1:当時の時代背景
  これが、いい加減だとさっぱりワカラン話になるが、
  知らなくても、程々にわかるような作り方をしている所が大した作品だと思う。
 それを、支えるように、衣装にものすごく力を入れたのではと思われる位に、衣装を何着も着替えている。
2:国内の情勢
 カトリックとプロテスタント、の対立。
  キリスト教でない私には何故こうも、反目するのか、理解できないが、
  これをうまくドラマの柱の一本にしている。
  エリザベスの姉メアリー王女は熱心なカトリック教、一方異母兄弟のエリザベスはプロテスタント
  しかし、ドラマ中エリザベスがプロテスタント的振る舞いはしていないのが...最後に
  「国家と結婚しました」と言う所で聖母マリアのようにと決心する所位であろうか?
3:激動の時代
  だから、登場人物がそれぞれ重要な意味合いを持つのだが、多すぎる。
  メモを取っても記憶力の弱い私にはややこしい。
  エリザベスを亡き者にしようと思っている連中は当然、カトリク系の人たちである。
  さらに、外にはスコットランドのメアリーも英国を脅かしている。
  原因はわからないが、エリザベスが即位したとき、国は極貧状態で陸軍は既にない状態。
  しかし、美しきエイザベスにスペイン国王、フランス国王の弟が求愛。
物語としては、
恋人との純愛と国事、陰謀の狭間で徐々に少女から女、そして....
最後に「男の心を持っています」と言わしめるまでになる。
それは当人の意志とは裏腹にである。
最初は実の姉に異教徒として処刑されようとロンドン塔に幽閉されるし。
姉が身ごもったと思ったら腫瘍で死亡するし。
即位したら、スコットランドに進軍するが、完敗するし、
カトリック教一派は暗殺を企てるし....。
味方がいないわけではないが....結果として、一番の味方はウオルシュンガム卿である。
もし、彼が居なかったら、エリザベスは暗殺されていたかもしれない。
反対に、暗殺の首謀者はことごとく捕らえられるか、刺殺されかして、一掃してしまう。
しかも、スコットランドのメアリーすら暗殺してしまう。
これによって、当面の敵はなくなり....
しかし、心を許していたはずの...恋人レスター伯爵は実は妻がある身でしかも
暗殺の一員に加わっていたのだ。
それを知ったエリザベスは嘆き悲しみ、一生独身を貫く事になった。

見所は、やはり衣装だろう。時代考証をどこまでやったのかはわからないが、
すばらしい物だ。エリザベスの物は特に素晴らしい。
また、主演女優のケイト・ブランシェットの演技もなかなかである。
女の顔と女王の顔をきちんと演じているのだから。
女としての色気、恋心、夢、方や非情な国政の手腕。
ただ、どうしてもワカランのは、どこからこの決断力と行動力、判断力が生まれたのか...。
たぶん潜在的に持っていたのだろうが、それが非情な情勢に遭って精一杯の努力をしたの
だろう。劇中、父ヘンリー8世の肖像に語りかけるところがあるが...。
気持ちはよくわかる。それで乗り切れた....のかもしれない。
しかし、か弱い女性から徐々に強い魂の女王に変貌していくさまは見応えある。

いまの激動の時代にあって、個々人がこのエリザベスに見習うべきなのかもしれない。