博士の愛した数式

SF好きの私にはなかなか手が出しにくい作品でした。
たぶん、多くの人もそうなんだろうと思います。
レンタル屋であまり借りられていないような感じです。他と比較すると枚数が多いから
借りられている絶対数は多いのだろうとは思いますが。
見終わって、実に良い作品だと思いました。博士が80分しか記憶が残らないという所が
強調されているのだが、内容的にはそれはひとつの演出と位に思った方が良いですね。
驚いたのは数式をルート先生が解説してくれるのです。
いかに数式が調和の取れた神秘なものか、この解説を聞いて初めて友愛数、完全数
オイラーの公式を知りました。
しかも、その説明を聞いて素晴らしいと思いました。
当然ですが、このなかで繰り広げられる人間模様、特に家政婦と博士の関係が
まるで数式のように素晴らしいことです。
最後に涙しました。無く映画でないのですがネ。
2人の関係が一般的に考えたら、もっとギスギスしたものになるんだろうが、
杏子の振る舞いが自然でしかも閉ざされた心の博士がどんどんと生き生きとしてき
また、杏子も博士の解説してくれる数式に楽しそうに興味をもってくれるとこが良いのだと。
だから、彼女の10歳の子も博士にルートとあだ名され、大きくなって学校の教壇にたち
その数式の素晴らしさを淡々と教えてくれるようになるんだ。
もし、このルート先生のような人が居たなら、本当に算数が楽しくまた興味深く思い、
勉強するようになるだろうと思いました。
子役のルートも阪神タイガースのファンで博士は江夏のファン、その背番号が28!
野球も数式の一部に組せられるのも、算数アレルギーの人も興味深く感じるだろう。
原作者の小川 洋子 さんってどうやって算数をしたんだろうと興味を持ちました。
数学科の卒業でもないのに....、
顔で判断するのはおかしいが、実に優しそうな人柄とお見受けした。
世にも美しい数学入門 」という書も出しておられるから、読んでみたい気になりました。

この映画は、出来れば、この学校のように、若い学生に見せてあげたいですね。
数学嫌いの人が多いのはやはりこのようなお話が無いからでは?と思いました。
ただ、理屈抜きに無味乾燥な説明だけでは数学を好きになれないと思いますね。

また、この監督小泉 尭史さんの演出が素晴らしい、全体の流れが実に淡々と...
終わりころに、あれ!どうなっちゃうの?という演出も単調さだけで終わらないように仕組んだ
ものだと思う。だから、最後でグーット感情を高ぶらせてくれるのだろう。

日本映画をやや馬鹿にしていた自分を反省させられました。
多くの人が見てくれると良いと思いました。数式も人も愛する気持ちになりますよ。

寺尾 聡:博士 深津 絵里:
   家政婦、杏子
斉藤 隆成:ルート 吉岡 秀隆:
    ルート先生
浅岡ルリ子:未亡人 原作者:
  小川 洋子